※本記事は、Canadian Mining Report にて Ben McGregor 氏が執筆した内容を翻訳・再構成したものです。
2025年は輸出許可制度、2026年6月は特定企業への輸出禁止、そして9月には表立った規制ではなく、輸出企業が米国向けの出荷そのものを拒む動きがみられています。レアアース関連株を考えるうえで重要なのはニュースの見出しではなく、その企業がサプライチェーンのどこに位置しているかです。
中国のレアアース規制は在庫にどのような影響を与えるのでしょうか。なぜ中国は米国へのレアアース供給を制限しているのでしょうか。そして、どの米国企業がレアアースのサプライチェーン構築を進めているのでしょうか。
こうした疑問が再び注目されるきっかけとなったのが、9月4日のロイターによる報道です。一部の中国企業が政治的リスクや、禁止対象となっている企業への転売リスクを懸念し、米国向けの出荷を拒否していると報じられました。
この問題は、習近平国家主席が9月24日にワシントンを訪問するのを前に、協議される予定の議題にもなっています。重希土類や磁石関連材料の価格は依然として高く、防衛、半導体、航空宇宙、エネルギー分野での供給不足も、首脳会談を開催するだけで解消されるものではありません。
「注目のレアアース株」「買うべきレアアース株」「2026年のレアアース株」「レアアースへの投資機会」といった言葉は、供給不足を材料にした投資テーマとして使われるでしょう。しかし、本記事では銘柄の推奨リストは提示しません。
米国のレアアース関連株は、供給制限のニュースを受けて上昇する可能性がありますが、その企業の分離・精製施設の稼働が遅れる可能性もあります。中国がレアアース市場で圧倒的な地位を占めているのは加工能力によるものであり、上場していることや株価が上昇していることとは別の問題です。両者を区別して考える必要があります。
理由の一つは、中国による規制が実際に機能しているためです。同時に、米国政府が中国のサプライチェーンに依存しない「鉱山から磁石まで」の供給網を構築しようとしていることも背景にあります。
2025年4月4日、米国との関税をめぐる対立を背景に、中国商務部(MOFCOM)はサマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウム、および関連する金属や磁石を輸出許可の対象としました。
さらに2025年10月には、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、ユーロピウム、イッテルビウムなどを対象とする第2弾の規制が発表されました。この措置は米中間の合意によって停止されましたが、延長されなければ2026年11月10日頃に再び発効する予定です。一方、2025年4月に導入された規制は現在も有効です。
その後の税関データでは、米国向けの混合・合金化されたレアアースの出荷量が従来の水準を大きく下回っていることが示されています。米中間の合意後には、米国向けのイットリウム出荷量がゼロkgと記録された集計もあります。他国向けの主要なレアアース輸出が回復した後も、米国向け磁石の輸出量は規制前の水準を下回っています。
2026年6月22日には、規制がさらに企業単位へと拡大しました。中国商務部は米国企業10社を輸出管理リストに追加し、通常の輸出許可より厳しい軍民両用品の輸出禁止措置を導入しました。
このリストにはMP MaterialsとUSA Rare Earthも含まれています。残る8社についても、中国政府が軍事用途との関連を指摘しています。域外適用条項によって、中国原産の軍民両用品を対象企業へ供給することは、第三国を経由する場合でも禁止される可能性があります。
さらに中国政府は別の措置として、米国企業46社からの調達も禁止しました。中国側は米国防総省による中国のハイテク企業への規制に対する対抗措置と位置づけています。一方、米国側から見れば、国内の磁石サプライチェーン再構築を狙った企業への圧力となっています。
9月になると、さらに非公式な供給制限も表面化しました。正式な輸出許可を取得できる可能性があったとしても、政治的リスクに見合わないとして、米国向けの注文そのものを受け付けない中国企業が出てきたのです。
つまり、中国によるレアアース規制は現在、元素ごとの輸出許可、特定企業への輸出禁止、輸出企業による自主的な出荷制限という3つの形で同時に機能しています。
中国全体のレアアース輸出量が税関統計上は回復していても、米国のジェットエンジン工場ではイットリウムが不足する可能性があります。世界全体の輸出量だけでは、中国による供給制限の実態を把握できないということです。
中国は依然として世界のレアアースの約70%を採掘し、約90%を精製しています。業界資料によれば、商業的に利用可能な重希土類の分離では99%近くを占めています。磁石用金属や焼結NdFeB(ネオジム鉄ホウ素)磁石の生産でも、中国が圧倒的なシェアを維持しています。
そのため、カリフォルニア州で軽希土類の精鉱を生産できたとしても、それだけで状況が変わるわけではありません。採掘された鉱石は磁石ではなく、完成した磁石も顧客の認定を受けるまでは防衛産業向け部品として使用できないためです。
レアアース価格を見ると、この市場の分断がより明確になります。2026年8月の市場データでは、ジスプロシウムは中国国内で1kgあたり約210米ドルで取引される一方、中国国外ではその数倍の価格となっています。
米国へのイットリウム輸入量も、2025年4月までの8カ月間には数百トン規模だったものが、その後は10トン台半ばまで急減しました。IEAの調査では、7元素への規制が全面的に適用された場合、数兆ドル規模の下流産業が影響を受ける可能性があるとされています。2025年には、すでに自動車の生産ラインが停止する事例も発生しました。
レアアース需要の中心となるのは、まず磁石です。電気自動車、風力発電、ロボット、ミサイル、さらにデータセンターで使用されるモーターなど、幅広い分野で利用されています。
特に供給制限によって価格が上昇したのが重希土類です。米国の輸入動向を見ると、分離されたジスプロシウムやテルビウムよりも、完成した磁石の輸入に依存しています。
これは重要鉱物のサプライチェーンが抱える問題を端的に示しています。米国は完成品である磁石を購入している一方、その原料となる分離済みの酸化物を十分に生産できていないのです。
実際にサプライチェーン構築を進めている企業は限られており、以下は買い推奨リストではありません。
MP Materialsは、米国唯一の大規模レアアース鉱山であるマウンテンパス鉱山を運営しています。精鉱生産量は4万~5万1,000トンの範囲で推移しており、2026年の市場予想は約4万8,000トンです。一方、中国のChina Northern Rare Earthだけでも、2026年には約10万3,000トンの酸化物を生産すると予想されています。
MP Materialsにとって戦略的に重要なのは、採掘だけではありません。分離されたNdPr(ネオジム・プラセオジム)、金属、磁石までの生産体制を構築することです。
米国政府も資金供給やオフテイク契約、NdPrについて1kgあたり約110米ドルの価格下限を含む支援策を提供しています。米国防総省からの支援を受けていることも、中国政府が同社を規制対象とした背景の一つです。同社は、中国からの供給ルートはすでにほぼ遮断されていると説明しています。
USA Rare Earthも、2026年6月に中国政府が公表したリストに含まれた企業の一つです。米国政府による大規模な支援を受けながら、米国内で金属から磁石までを生産する体制の構築を目指しています。ただし、中国政府の規制対象に指定されたこと自体が、レアアース資源量や生産能力を意味するわけではありません。むしろ、米国によるサプライチェーン再構築そのものが中国の規制対象となっていることを示しています。
Energy Fuelsも米国内でレアアースを処理できる可能性を持っています。一方、その他の米国内のプロジェクトには、まだ鉱床開発や予備的経済性評価(PEA)、磁石製造の立ち上げ段階にあり、商業規模で認定製品を生産していないものも多くあります。
中国以外で実際に商業規模の重希土類酸化物を生産している企業として重要なのがLynas Rare Earthsです。2026年にはマレーシアでジスプロシウム、続いてテルビウム酸化物の生産を開始し、重希土類の処理能力は年間約1,500トンとされています。
ただし、Lynasはオーストラリア上場企業であり、米国のレアアース関連株ではありません。また、設備投資額はすでに上方修正され、一部元素の生産開始は2028年頃まで延期されています。それでも、中国以外のレアアース供給網を評価するうえで重要な基準となる企業です。
Iluka ResourcesのEneabbaやArafura Rare EarthsのNolansも今後の供給源として注目されますが、本格的な貢献は2027年以降になるとみられています。
カナダでは、Saskatchewan Research Council(SRC)の施設が短期的に重要です。同施設では湿式製錬、分離、金属製造を行い、磁石グレードのNdPrに加え、ジスプロシウムとテルビウムの生産を目指しています。
2026年9月の主要工事完了、年末までの試運転開始、2027年の生産拡大が計画されています。カナダのレアアース産業を考えるうえでは、単なる新規鉱床よりも、こうした実際の中流工程を担う施設の存在が重要です。
影響は企業によって大きく異なり、単純に「供給制限=すべてのレアアース関連株にプラス」と考えることはできません。
中国企業が米国向けの出荷を拒否したというニュースは、供給不足への期待から米国のレアアース関連株を押し上げる可能性があります。しかし、その企業自身が中国産の試薬や原料に依存していたり、中国の域外適用規制を懸念する第三国の処理施設を利用していたりすれば、事業に悪影響が及ぶ可能性もあります。
そのため、中国のレアアース規制が関連株に与える影響を考えるには、企業がサプライチェーンのどの段階に位置しているかを見る必要があります。
精鉱のみ
分離施設を持たない鉱山は、最終的に中国の処理施設へ精鉱を販売する可能性があります。米国への供給規制が強まれば、その鉱床の戦略的重要性は高まりますが、企業が実際に受け取る販売価格や利益が増えるとは限りません。
分離・金属
現在、最も希少価値が高いのがこの工程です。Lynas、SRC、MP Materialsによる中流工程への投資が該当します。
ただし、分離施設には巨額の設備投資が必要で、コスト超過やスケジュールの遅延も起こり得ます。また、価格下限を伴うオフテイク契約は事業の安定性を高める一方、供給不足による価格上昇の恩恵を制限する可能性もあります。
磁石・部品
実際に自動車などの生産ラインが停止するのは、この段階で供給不足が発生した場合です。同時に、製品認定や運転資金も重要になります。磁石工場を建設しても、認定された重希土類酸化物を確保できなければ十分に稼働できません。
探鉱段階のレアアース関連企業の株価は、政策サイクルに左右される傾向があります。特に重要なのが2026年11月10日です。
停止されている中国の域外適用規制が再び発効すれば、中国国外での価格プレミアムが維持される可能性があります。一方、9月24日の米中首脳会談を経て輸出許可の緩和がさらに1年間延長されれば、上場するレアアース関連企業に織り込まれた供給不足プレミアムは、実際の鉱山や処理施設が完成するよりも早く縮小する可能性があります。
つまり、2026年のレアアース関連株は、地質や鉱床の質だけでなく、政策がどれだけ長く継続するかにも左右される投資対象です。
なお、「重要鉱物」を掲げているという理由だけで銅・亜鉛鉱山をレアアース関連株として扱うべきではありません。同様に、企業資料に磁石という言葉が登場するだけで金鉱会社をレアアース関連企業に分類するべきでもありません。重要なのは、その事業から実際に売上高が発生しているかどうかです。
今後は、中国政府による輸出許可の発行状況だけでなく、実際に輸出企業が注文を受け付けているかにも注目する必要があります。また、世界全体のレアアース輸出量ではなく、米国に実際に届くイットリウム、ジスプロシウム、テルビウムの量を見ることも重要です。
MP MaterialsとUSA Rare Earthについては、中国原産の原料に対する域外適用規制への対応が焦点となります。Lynasについては重希土類酸化物の生産量と設備投資額、SRCについては施設の完成式ではなく、実際に試運転から商業生産へ移行できるかが重要です。
そして、政策面では2026年11月10日が大きな節目となります。その前に予定されている9月24日の米中首脳会談で、「輸出許可の円滑化」が示されるのか、それとも新たな規制対象が追加されるのかにも注目が集まります。
中国国内と国外のレアアース価格差も重要な指標です。この差が縮小すれば、供給不足を理由にレアアース関連株が買われる状況には逆風となります。一方、価格差がさらに拡大すれば、分離・精製など中流工程を持つ企業には追い風となります。
ただし、それがすべてのジュニア鉱山会社にとってプラスになるわけではありません。単にカーボナタイト型のレアアース鉱床を保有していることと、実際に不足している重希土類を分離・精製して販売できることは別だからです。
中国は現在、輸出許可制度、特定企業への輸出禁止、そして中国企業による自主的な出荷制限という複数の手段を通じて、米国へのレアアース供給を制限しています。
これが、米国企業が「鉱山から磁石まで」のサプライチェーン構築を急いでいる理由です。また、カナダにとっても、新たな鉱床の予備的経済性評価(PEA)より、サスカチュワン州で実際に建設されている分離・金属製造施設の方が短期的には重要です。
レアアース関連株への影響も一様ではありません。実際に分離や磁石製造を行う企業には政策によるプレミアムが生じる可能性がありますが、それ以外の企業ではニュースによる一時的な株価上昇にとどまる可能性があります。そして2026年11月の規制動向によって、その両方が大きく見直される可能性があります。
「注目のレアアース株」や「買うべきレアアース株」といった言葉は、あくまで検索キーワードにすぎず、デューデリジェンス(投資先の調査・分析)の代わりにはなりません。中国によるレアアース市場の支配が、一つのニュースだけで終わるわけでもありません。
中国以外のレアアースサプライチェーンは、規制リストが更新される速度ではなく、実際に設備投資が進む速度で構築されます。規制対象リストは競争の構図を示すものですが、投資家が注目すべき資産は、実際に稼働する鉱山、分離施設、金属・磁石工場です。
【重要なお知らせ】
本記事は情報提供および教育目的のみを意図したものであり、MP Materials、USA Rare Earth、Lynas、カナダの上場企業、その他のレアアース・鉱業関連証券の購入、売却、保有に関する投資助言や推奨を目的とするものではありません。
企業名は業界の背景を説明するために記載しています。輸出規制の日付、生産量、価格、試運転スケジュールは変更される可能性があります。また、将来の見通しに関する記述には不確実性が伴います。
鉱業および特殊金属への投資は元本の損失につながる可能性があります。必要に応じて資格を有する専門家にご相談ください。著者および出版社は、本記事の内容に基づいて行われた行為について一切の責任を負いません。過去の実績は将来の結果を保証するものではありません。
Ben McGregor氏は、Canadian Mining Reportで毎週更新される「Weekly Roundup」を執筆し、金属・鉱業セクターを分析しています。金、銅、ウランなど幅広い鉱種を取り上げ、市場動向やTSXV上場のジュニア鉱山会社について、データに基づいた分析を提供しています。