銅価格は1万4,000ドル近辺で推移、供給懸念は後退も上昇は続くのか?

September 16, 2026

※本記事は、Canadian Mining Report にて Ben McGregor 氏が執筆した内容を翻訳・再構成したものです。

銅価格は1トンあたり1万4,000米ドル前後で推移しています。LME(ロンドン金属取引所)への銅の流入が増えたことで、短期的な供給逼迫への懸念は後退しました。一方、新たな鉱山供給が増えたわけではなく、送電網やデータセンターなどによる長期的な銅需要も残っています。今後の銅価格を左右するのは、在庫の動向や米国の関税政策、FRBの金融政策です。

銅価格は2026年9月15日時点で、1トンあたり1万4,000米ドル前後で推移しました。

これは過去最高値ではありません。LMEの3カ月先物価格は9月8日に約1万4,736米ドルまで上昇しましたが、14日には1万4,000米ドルを下回り、3週間ぶりの安値をつけました。ピークからの下落率は約6.2%です。

15日のロンドン市場では、3カ月先物価格は1万4,014.50米ドル前後でほぼ横ばいとなり、現物価格は1万4,045米ドル前後でした。

この値動きの背景には、LME倉庫への銅の流入があります。

LMEの銅在庫は約24万9,200トンとなり、30日間で約20%増加しました。このうち、先物取引で受け渡し可能なオンワラント在庫は約24万2,900トンです。

14日の入庫量は約4週間ぶりの高水準となり、一度に約9,600トンが追加されました。そのうち4,550トンはイタリアの倉庫に搬入されています。

新たな銅がLME倉庫へ流入した影響は、市場構造にも表れています。

それまで市場から見えにくかった在庫が表面化したことで、期近の銅をめぐる供給逼迫が緩和されました。3カ月先物価格が現物価格を上回るコンタンゴへ転じたことも、その表れです。

コンタンゴは、将来の価格が現物価格を上回る状態で、足元で銅をすぐに確保する必要性が低下していることを示します。反対に、現物価格が先物価格を上回るバックワーデーションは、足元の供給が逼迫していることを示します。

では、銅価格の上昇は続くのでしょうか。

短期的には、米国の関税政策、LMEの在庫、FRBの金融政策が価格を左右します。一方、長期的には鉱山からの供給不足、送電網への投資、データセンターによる需要拡大などが銅価格を支える可能性があります。

ただし、LMEへの銅の流入が続き、米国が市場で想定されている銅関税を導入しなければ、価格には下押し圧力がかかる可能性があります。

本記事は銅関連株の購入を推奨するものではありません。現在の銅市場で何が起きているのかを整理し、今後の需給を考えるための材料を提供するものです。

銅価格の上昇は地域的な供給逼迫も要因

直近の銅価格上昇は、世界全体で銅が不足したことだけが原因ではありません。

精製銅が大量に米国へ運ばれたことで、世界のほかの地域で利用できる銅が減少したことも価格上昇につながりました。

背景にあるのが、米国による精製銅への関税導入をめぐる思惑です。

トレーダーは関税が導入される可能性を見越して、大量の精製銅を米国へ輸送しました。その結果、COMEXの在庫は増加を続け、約76万7,500ショートトン、約69万6,000トンに達しました。

一方、LMEの倉庫では在庫が減少しました。

つまり、米国には大量の銅が存在する一方、ロンドンでは受け渡し可能な銅が不足するという地域的な偏りが生じていたのです。この状況が、世界全体では銅が存在するにもかかわらず、価格を過去最高水準まで押し上げる要因の一つとなりました。

ただし、米国による関税はまだ実施されていません。

米政府の決定をめぐる不透明感が、米国の銅価格をロンドンより高い水準に維持し、銅を米国へ輸送する動機となっています。

また、今回のLMEへの入庫が増えるまでは、ロンドン市場ではすぐに受け渡し可能な銅が不足していました。

ここで注意したいのは、取引所の銅在庫と、実際にケーブル工場などが保有する銅在庫は異なるという点です。

取引所在庫は、市場から確認できる「見える在庫」です。LMEの在庫が30日間で20%増加したことで、市場が確認できる供給量は大きく増えました。

それでも、LMEの過去20年間の水準と比較すれば、現在の在庫は中程度にすぎません。長期的な供給過剰を示すほどではありませんが、短期的な供給逼迫を緩和するには十分な量です。

中国経済とFRBも銅価格を左右

銅価格を考えるうえでは、中国経済と米国の金融政策も重要です。

中国の8月の鉱工業生産は市場予想を上回りました。一方、個人消費と投資は予想を下回っています。

世界最大の銅消費国である中国では、工業生産が堅調な一方、個人消費は弱いという二極化した状況が続いています。

そのため、中国経済を単一の指標だけで判断することは難しく、景気刺激策が銅需要へどの程度波及するのかを見極める必要があります。

さらに、FRBは翌日に金融政策を決定する予定で、市場では利上げの確率が90%近くまで上昇していました。

米国の金利上昇は米ドル高につながる可能性があります。銅は米ドル建てで取引されるため、ドル高になれば米国外の買い手にとって銅価格は相対的に割高になります。

また、原油価格が1バレルあたり105~108米ドル付近まで上昇すれば、インフレ圧力が強まり、FRBがさらに金融引き締めを進める可能性があります。一方、経済成長が鈍化すれば、工業用金属である銅の需要減少につながる可能性もあります。

短期的な銅市場を見るうえでは、LME倉庫への銅の流入、米国の関税政策、FRBの金融政策という3つの要因が重要です。

送電網やAIによる長期的な銅需要を考える前に、まずはこれらの短期的な材料がどのように落ち着くのかを確認する必要があります。

長期的な銅の供給不足は解消されていない

2026年の銅価格を考える際に、「構造的な供給不足」という言葉だけで価格上昇を説明することはできません。

ただし、長期的な供給問題そのものがなくなったわけでもありません。

新規鉱山からの世界的な銅供給の伸びは鈍く、鉱山開発に必要な許認可にも時間がかかっています。また、既存鉱山では鉱石品位の低下も進んでいます。

需要面では、データセンターや送電網への投資が長期的な銅需要を押し上げる要因として引き続き注目されています。

LMEのイタリア倉庫へ4,550トンの銅が入庫したからといって、こうした長期的な需給要因がなくなるわけではありません。

一方、直近の1万4,736米ドルという価格を今後の下値と考えることも適切ではありません。実際、今週は1万4,000米ドルを下回る場面がありました。

現在の銅市場は、短期的な供給逼迫が緩和される一方、長期的な需要期待が残ることで価格が大きく変動しやすい状態にあります。

2026年の銅市場では、LMEとCOMEXの双方を確認する必要があります。

関税への思惑から精製銅が米国に滞留すれば、世界全体で銅が不足していなくても、ロンドン市場では再び供給が逼迫する可能性があります。

反対に、銅がLME倉庫へ戻り続ければ、1万4,000米ドルという価格水準を維持することが難しくなる可能性があります。

そのため、単純な在庫総量だけでなく、キャンセルドワラントとオンワラント在庫の動向にも注目する必要があります。

カナダの銅関連株を見る際のポイント

銅鉱山株は、LMEなどの倉庫在庫が増減したからといって、それに連動して同じ割合で動くわけではありません。

カナダには、Teck Resources(テック・リソーシズ)、Hudbay Minerals(ハドベイ・ミネラルズ)、Lundin Mining(ルンディン・マイニング)、Capstone Copper(キャップストーン・カッパー)、Ivanhoe Mines(アイバンホー・マインズ)、Foran Mining(フォラン・マイニング)など、多くの銅関連企業があります。

ただし、これらは同じ種類の投資対象ではありません。

すでに銅を生産している企業と、銅資源を保有しているものの、まだ鉱山や処理施設を持たない探鉱・開発企業では、収益構造が大きく異なります。

また、銅価格が高騰していても、ディーゼル価格が1ガロンあたり6米ドルまで上昇すれば、鉱山の採掘・運搬コストも上昇します。

さらに、関税導入を見越して銅を特定の国へ移動させた後、実際には関税が導入されなければ、企業の運転資金が不必要な場所に滞留する可能性もあります。

銅関連株を調査する際には、埋蔵量、事業地域、生産コストを確認することが重要です。

銅価格が再び1万4,700米ドルまで上昇しなければ投資シナリオが成立しない銘柄は、鉱山への長期投資というより、銅価格上昇に賭ける取引に近くなります。

本記事では、これらの企業に順位をつけることはしません。

銅価格の上昇は続くのか?

今回の記録的な銅価格の上昇は、供給不足と関税をめぐる取引が重なった結果です。

そのうち、短期的な供給逼迫については、LMEへの銅の流入によって一部緩和されました。

一方、関税については依然として不透明な部分が残っています。そして、新たな鉱山供給が急速に増えたわけでもありません。

チリでは2026年に悪天候の影響があり、新規プロジェクトの進捗にも遅れがみられるなど、供給面の問題は残っています。

銅価格が1万4,000米ドルからさらに上昇するには、新たな材料が必要になる可能性があります。

例えば、中国による実際の在庫積み増し、市場構造を大きく変える関税の導入、新たな鉱山事故などです。

反対に、LMEへの銅の流入が続き、米ドル高が進み、FRBが金融引き締め姿勢を強めれば、銅価格の上昇が止まる可能性があります。

どちらのシナリオも確実ではありません。

2026年の銅市場では、同じ四半期のなかで過去最高値を更新した後に6%下落し、その後1万4,000米ドル付近で横ばいになるといった、大きな値動きが起こる可能性があります。

結論

LMEへの新たな銅の流入によって、ロンドン市場で銅が不足するという短期的な懸念は後退しました。

ただし、これは新しい鉱山が稼働し、世界の銅供給そのものが増えたことを意味するわけではありません。

銅価格が1トンあたり1万4,000米ドル前後で推移している背景には、短期的な供給逼迫が緩和される一方、長期的な供給不足への懸念が依然として残っているという状況があります。

今後はLMEとCOMEXの在庫、米国の関税政策、FRBの金融政策を確認することが重要です。

直近の在庫増加によって、少なくとも短期的な供給逼迫だけが銅価格を押し上げる状況ではなくなりつつあります。

【重要なお知らせ】

価格および在庫の数値は、2026年9月14~15日に公表されたLMEのデータや関連報道などに基づいています。LMEの倉庫在庫は約24万9,200トンとなっています。これらの数値は取引ごとに変動します。

企業名は調査のための例として掲載しており、推奨ではありません。本記事は投資助言ではなく、銅または鉱業関連証券の売買を推奨するものでもありません。

投資に関するご相談は、資格を有するアドバイザーにご相談ください。著者および発行者は、本記事に基づいて行われた行為について一切の責任を負いません。

著者:Ben McGregor

Ben McGregor氏は、Canadian Mining Reportで毎週更新される「Weekly Roundup」を執筆し、金属・鉱業セクターを分析しています。金、銅、ウランなど幅広い鉱種を取り上げ、市場動向やTSXV上場のジュニア鉱山会社について、データに基づいた分析を提供しています。

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