李録氏の『Moving the Mountain』に学ぶ、卓越した投資家になるための5つの教訓

July 30, 2026

※本記事は、Canadian Mining Report にて Ben McGregor 氏が執筆した内容を翻訳・再構成したものです。

著名なバリュー投資家である李録(Li Lu)氏は、中国の文化大革命や1989年の天安門事件を経験し、その後米国へ亡命しました。こうした人生経験を通じて培われた回復力や徹底した調査力、長期的な信念、独立した思考力は、投資家にとっても重要な教訓になります。

YouTubeのドキュメンタリー「Li Lu Documentary (Complete, High Quality Version)」、別名『Moving the Mountain』では、李録氏の幼少期から天安門事件、米国への亡命までの人生が描かれています。

この作品は、後にヒマラヤ・キャピタルを設立し、著名なバリュー投資家となった李録氏の投資手法そのものよりも、彼の人生や政治活動に焦点を当てています。

しかし、そこで描かれる不屈の精神や犠牲、責任感、困難な状況でも粘り強く行動する姿勢は、卓越した投資家を目指すうえでも応用できます。

李録氏の物語は、単に逆境を乗り越えたという話ではありません。世界トップクラスの投資家に必要な精神的な強さ、知的な厳密さ、長期的な信念、独立した思考力がどのように形成されたのかを考える材料にもなります。

1.内なる強さと心理的な回復力を身につける

文化大革命の最中、幼い李録氏は幼稚園で差別や厳しい扱いを受け、寒空の下で裸足のまま立たされることがありました。

当時、李録氏は「触れると体の一部が落ちてしまう」というトカゲの言い伝えを恐れていました。あるとき足に何かが触れた感覚があり、恐怖を感じたものの、翌朝目を覚ますと自分の体には何も起きていませんでした。

この経験は、極度の恐怖の中でも自分は耐えられるという感覚につながり、その後の人生で困難に直面した際の精神的な支えになったとされています。

投資の世界にも、こうした「トカゲ」のような恐怖は数多く存在します。

株価の急落、予想外のニュース、セクター全体の暴落、あるいは自分の投資判断に対する疑念などです。

優れた投資家は、こうした状況でも簡単にパニックにはなりません。冷静さと自分の判断への確信を保つことで、相場の底で恐怖から売却したり、逆に高値で熱狂に乗って買ったりすることを避けます。

これは投資リターンを大きく損なう代表的な行動を防ぐうえでも重要です。

心理的な回復力を鍛える3つの方法

  1. 小さな不快感から慣れる
    あらかじめ決めた投資計画に基づき、ある程度の価格変動があってもすぐにポジションを手放さないなど、小さな場面から不快感に耐える練習をします。
  2. 自分を支える軸を持つ
    投資を行う理由や自分の原則を明確にし、日記やメンター、過去の事例などを通じて、苦しい場面でもそれを思い出せるようにします。
  3. 市場の歴史を学ぶ
    過去の市場危機と、それを優れた投資家がどのように乗り越えたかを学びます。李録氏の人生も、精神的な強さは快適な環境ではなく、逆境の中で培われることを示しています。

2.長期的な目的とビジョンを持つ

李録氏は、天安門事件への参加について、自分が「歴史に召された」と感じたと語っています。

自分の人生を自分だけのためのものではなく、将来の世代のために意味のある変化をもたらすためのものとして捉えていました。

ドキュメンタリーの最後には、老人が子供たちと一緒に山を動かそうとする中国の伝説が登場します。一見すると不可能に思えることでも、世代を超えて粘り強く取り組み続ければ実現できるという考え方を象徴しています。

投資でも、短期的な売買や四半期ごとの成績だけに意識を向けると、長期的な成果を生み出しにくくなります。

優れた投資には、10年、20年、さらにその先を見据えた視点と、時間をかけて複利効果を積み上げていく姿勢が必要です。

資本をどこに配分するかを真剣に考え、優れた企業を支援し、価値を破壊する企業への投資を避ける。その積み重ねが長期的な成果につながります。

長期的な視点を身につける3つの方法

  1. 投資の目的を明確にする
    家族のために資産を増やす、経済的な自立を実現するなど、自分がなぜ投資するのかを書き出し、定期的に見直します。
  2. 10~20年単位で考える
    次の四半期の株価ではなく、その投資が10年、20年後にどのような結果につながるかという視点で判断します。
  3. 「山を動かす」という考え方を持つ
    大きな成果には継続的で忍耐強い努力が必要です。短期的な結果だけではなく、正しいプロセスを積み重ねることを重視します。

3.勇気を持って独立して考える

李録氏は、周囲に合わせるのではなく、自分の信念に基づいて行動してきました。

天安門事件では大きな個人的リスクを負いながら抗議活動に参加し、学生リーダーたちを組織しました。その後も危険を伴うルートを通って中国から脱出しています。

自分が孤立する可能性があっても、自分自身が正しいと考えたことに基づいて行動したのです。

投資でも、独立した思考を持つことは重要です。

多くの投資家は、人気のあるものを買い、恐れられているものを売るという集団行動に陥りがちです。その結果、割高な資産を買ったり、割安になった優良資産を手放したりすることがあります。

優れた投資家は、自分自身で徹底的に調査し、市場とは異なる結論に至った場合でも、その分析に基づいて行動します。

市場全体が恐怖に包まれているときに優良な資産を買うには、独立した分析だけでなく、それを実行する勇気も必要です。

独立した思考力を鍛える3つの方法

  1. 幅広い分野を学ぶ
    歴史や哲学、科学、ビジネスなど幅広い分野の本を読み、世間の意見や専門家の主張をそのまま受け入れるのではなく、自分自身で結論を出す習慣を身につけます。
  2. 一般的な見方を疑ってみる
    調査する際には「もし市場の一般的な見方が間違っていたらどうなるか」と考え、別の可能性を検討します。
  3. 徹底した準備によって確信を持つ
    人と異なる行動をするには、十分な調査が必要です。分析が深ければ深いほど、自分の判断に基づいて行動する自信も高まります。

4.徹底した準備と細部へのこだわりを持つ

天安門事件の抗議活動では、李録氏は組織をまとめる役割も担いました。

学生代表を選ぶ仕組みを整え、指揮系統を構築し、バリケードの設置などを調整するなど、混乱した状況でも計画的に行動していました。

こうした姿勢は、その後の投資家としての行動にもつながっています。

投資でも、優れた成果は優れたプロセスから生まれます。

表面的な調査や感情的な判断は、大きな損失につながる可能性があります。

李録氏のその後の投資活動でも、徹底したデューデリジェンスや「正確かつ完全な情報」を求める姿勢が重視されています。

投資を単なる株式売買ではなく、学術研究や調査報道のように真剣な作業として扱うことが重要です。

投資プロセスを改善する3つの方法

  1. 「調査報道記者」のように調べる
    表面的な説明で満足せず、企業の開示資料、経営陣の経歴、競争環境、リスクなどを徹底的に調べます。
  2. 投資判断を仕組み化する
    投資アイデアの発見、企業評価、リスク分析などについてチェックリストを作成し、投資後には判断が正しかったかを振り返ります。
  3. 継続的に学び続ける
    投資を一生かけて磨く技術として考えます。専門レポートや業界資料を読み、自分の知識の範囲を少しずつ広げていきます。

5.歴史と逆境から学び、同じ失敗を繰り返さない

ドキュメンタリーは、「歴史から学ばなければ、同じ過ちを繰り返すことになる」という警告から始まります。

李録氏が厳しい環境を生き抜き、その後成長できた背景には、過去の経験や社会の失敗を理解し、そこからより良い道を選ぼうとした姿勢があります。

投資市場でも、歴史は繰り返します。

好況と不況、熱狂と絶望、バブルとその崩壊は、形を変えながら何度も起きています。

市場サイクルや過去のバブル、大恐慌、商品スーパーサイクルなどを学んでいる投資家は、他の投資家が過去に犯した失敗を避けやすくなります。

特に鉱業や資源投資は景気循環の影響を強く受けるため、過去の資源ブームとその後の不況を学ぶことは、次のサイクルに備えるうえで重要です。

歴史から学ぶ3つの方法

  1. 過去の市場サイクルを分析する
    鉱業ブームと不況、商品価格の推移、企業が成功・失敗した理由などを調べます。
  2. 投資判断を記録する
    重要な投資を行った際には、そのとき何を考えていたのか、どのような前提を置いていたのか、どんな感情だったのかを記録します。後から見返すことで、自分の判断の癖を確認できます。
  3. 普遍的な原則を見つける
    最新のテーマを追いかけるだけでなく、安全マージン、事業の質、経営陣の誠実さなど、時代が変わっても通用する原則を重視します。

卓越した投資家になるための5つの実践

李録氏の人生は、優れた投資家が生まれながらに特別な才能を持っているとは限らないことを示しています。

逆境や継続的な訓練、強い目的意識を通して、投資家として必要な資質を少しずつ身につけることができます。

李録氏の成功から読み取れる重要な要素は、人格、厳格な投資プロセス、そして長期的な視点です。

具体的には、次の5つにまとめられます。

  1. 回復力を鍛える
    適度な不快感に慣れる経験や、市場の歴史を学ぶことを通じて、困難な場面でも冷静に判断できる力を養います。
  2. 独立した信念を持つ
    幅広く学び、自分自身で分析することで、周囲の意見に依存せずに判断できるようにします。
  3. 投資を生涯にわたる技術として磨く
    継続的に学習し、企業分析を学術研究のように真剣に行います。
  4. 長期的な視点で積み重ねる
    「山を動かす」ように、一度に大きな成果を求めず、自分の目標に向かって少しずつ積み上げます。
  5. 歴史から徹底的に学ぶ
    自分自身の失敗、市場の歴史、地政学的な出来事などから学び、大きな損失につながる同じ過ちを繰り返さないようにします。

鉱山株投資では、こうした資質がより重要になる

鉱山株への投資や投機では、李録氏のこうした資質が特に重要になります。

鉱業セクターでは、長期間の低迷に耐えながら、多くの投資家が避けるような技術面・ファンダメンタルズ面の分析を行う必要があります。

さらに、商品価格や市場心理が悪化しているときでも、自分の分析が正しければ確信を維持しなければならない場面があります。

李録氏の人生は、卓越した投資家には知的能力だけでなく、強い人格や精神力も必要であることを示しています。

『Moving the Mountain』から学べる回復力、目的意識、準備、独立心、粘り強さを身につけることで、投資家としての優位性を少しずつ高めることができます。

歴史上の困難な出来事の中で培われた思考力や行動力は、投資においても大きな意味を持ちます。長期的な視点で同じ姿勢を積み重ねていくことが、優れた投資成果につながる可能性があります。

【免責事項】

本記事は情報提供および教育を目的としており、特定の証券や鉱山株の購入、売却、保有を推奨するものではありません。

鉱業や資源株への投資には、商品価格の変動、探鉱・開発・操業リスクなどさまざまなリスクがあり、投資資金の全部を失う可能性もあります。

投資判断を行う際には、ご自身で十分なデューデリジェンスを行い、企業の開示資料などを確認したうえで、必要に応じて専門家にご相談ください。

著者:Ben McGregor

Ben McGregor氏は、CanadianMiningReport.comにおいて「Weekly Roundup」を執筆しており、金属・鉱業セクターに関する分析を行っています。

金、銅、ウランなど幅広い鉱種を扱い、データに基づいた視点と投資機会を見極める分析を組み合わせながら、特にTSXV(トロント・ベンチャー取引所)に上場するジュニア鉱山企業を中心に市場動向を発信しています。

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