※本記事は、Canadian Mining Report にて Ben McGregor 氏が執筆した内容を翻訳・再構成したものです。
重要なのは、分離された重希土類酸化物と磁石の不足です。単なる鉱床の発見やプレスリリースではありません。注目すべきは11月10日であり、「注目の金関連株」といった銘柄リストではありません。
レアアースの供給不足は、もはや単なる予測ではありません。輸出許可制度によってすでに現実のものとなっており、同じ1kgのレアアースでも中国国内と国外で大きな価格差が生じています。さらに、ジェットエンジンの製造に必要なイットリウムの供給が制限され、西側諸国の政府はオフテイク契約や価格下限の設定を進めています。
こうした状況から、「レアアースは次の鉱業ブームにつながるのか」という疑問が浮かびます。ただし、どの金属が本当の供給制約に直面しているのかを見誤れば、投資家は大きな損失を被る可能性があります。
レアアースは17元素で構成されています。現在、商業的に特に注目されているのは、ネオジム磁石を高温環境でも機能させるために使われる重希土類です。なかでもジスプロシウムやテルビウム、そして2025年4月に中国の輸出規制対象となった関連元素が重要になっています。
一方、金鉱会社や銀鉱会社がこうした酸化物を生産しているわけではありません。「注目の金関連株」「最高評価の金関連株」「買うべき金鉱株」といったテーマと、現在起きているレアアースの供給不足は分けて考える必要があります。「金は良い投資先なのか」「今は金に投資すべきなのか」といった問いも、レアアースや磁石のサプライチェーンとは別の問題です。
なお、本記事は投資助言を目的としたものではありません。鉱山プロジェクトは遅延する可能性があり、輸出許可制度が緩和される可能性もあります。また、中国国外で分離・精製できないレアアース精鉱は、それだけで新たな鉱業ブームを意味するものではありません。最終的には、他社の分離・精製施設へ送る原料にすぎないためです。
中国は世界のレアアースの約69~70%を採掘し、約90%を精製しています。商業的に重要な重希土類の分離では約99%を占めるとされ、金属・合金への加工では約90~92%、焼結NdFeB(ネオジム鉄ホウ素)磁石の製造でも約92~94%を占めています。
つまり、中国以外の国でレアアース鉱山を開発するだけでは、現在のボトルネックを解消できません。カリフォルニアや西オーストラリア州で鉱石を採掘できたとしても、その後の分離・精製や磁石製造まで含めたサプライチェーンが必要だからです。
2025年4月4日、中国商務部(MOFCOM)はサマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウム関連製品を輸出許可の対象としました。さらに同年10月には対象範囲を拡大し、中国原産のレアアースや中国の加工技術を使用して海外で製造された製品にも許可を求める可能性のある域外適用条項を追加しました。
その後、米中間の合意によって10月の拡大措置は1年間停止されましたが、4月に導入された規制は現在も有効です。この停止措置が延長されなければ、2026年11月10日頃に10月の規制が再び発効する予定です。
CSISや税関データの集計からは、その影響の大きさが見えてきます。米国のイットリウム輸入量は、2025年4月までの8カ月間には数百トン規模だったものの、その後は10トン台前半まで急減しました。航空宇宙メーカーからはコーティング材料の不足も報告されています。
2026年8月下旬の報告では、中国以外に商業規模で酸化イットリウムを生産する企業は存在せず、米国へのイットリウム供給は前年から約75%減少したとされています。また、2026年にレアアース全体の主要輸出量が回復した後も、一部の規制対象となった重希土類の輸出量は、規制前の水準を約50%下回っています。
価格差も供給制約の深刻さを示しています。2026年8月の市場データでは、ジスプロシウムは中国国内で1kgあたり約210米ドルだったのに対し、中国国外では575米ドルから2,500米ドル以上で取引されています。これは単なる将来価格への期待ではなく、中国国内と国外で実際に生じている価格差です。
IEAの調査では、7元素に対する規制が全面的に適用された場合、自動車、防衛、エネルギー、ハイテクなど数兆ドル規模の下流産業が影響を受ける可能性があるとされています。実際、2025年には自動車工場の生産ラインが停止する事例も発生しました。
さらに2026年6月には、MP MaterialsやUSA Rare Earthなど複数の企業が規制対象リストに追加されました。両社は、中国からの供給ルートがすでにほぼ遮断されているとしています。そのため、調達担当者にとっては、中国の域外適用規制がどこまで及ぶのかを確認することも重要になっています。
MP Materialsは、米国唯一の大規模レアアース鉱山であるマウンテンパス鉱山を運営しています。精鉱生産量は4万~5万1,000トンの範囲で、2026年の市場予想は約4万8,000トンです。
しかし、戦略的に重要なのは採掘量そのものではありません。分離されたNdPr(ネオジム・プラセオジム)、磁石用金属、そして米国政府による支援策です。支援策には資金供給やオフテイク契約に加え、NdPrについて1kgあたり約110米ドルの価格下限も含まれています。
一方、中国のChina Northern Rare Earthだけでも、2026年の酸化物生産量は約10万3,000トンに達すると予想されています。ある市場予想では、上場する主要生産者7社の生産量を合計しても、依然として約68%を中国企業が占めています。
Lynas Rare Earthsは、中国以外で実際に大規模なレアアース分離を行っている生産者です。2026年半ばにはマレーシアでジスプロシウム、続いてテルビウム酸化物の生産を開始する計画で、重希土類の処理能力は年間約1,500トンとされています。
これは中国以外の重要な供給源となりますが、規模はまだ小さく、生産分の多くはすでに割り当てられ、防衛関連の供給協議でも確保されています。
また、同社はマレーシアの重希土類設備の建設費見通しを1億8,000万豪ドルから約2億9,400万豪ドルへ引き上げ、ガドリニウム、イットリウム、ルテチウムの生産開始を2028年へ延期しました。1kgあたり約98豪ドルという過去最高水準の平均販売価格は、製品構成と供給逼迫の両方を反映しています。同時に、コスト上昇は「中国以外の供給網」を構築することの難しさも示しています。
Iluka ResourcesのEneabba精製施設、Arafura Rare EarthsのNolansプロジェクト、Energy Fuelsの処理能力、Meteoric Resourcesなどの後期段階のプロジェクトも、中国以外の供給網を構築する候補です。
ただし、重要なのは鉱床の存在だけではありません。分離設備の整備状況、重希土類へのエクスポージャー、顧客からの認定などを確認する必要があります。評価の高いプロジェクトだからといって、それがそのまま買い推奨を意味するわけではありません。予備的経済性評価(PEA)が完成していても、磁石を生産できるわけではないためです。
カナダのレアアース産業を考えるうえで重要なのが、Saskatchewan Research Council(SRC)の施設です。同施設では、湿式製錬、分離、金属製造を1カ所で行い、磁石グレードのNdPrに加え、ジスプロシウムとテルビウムの酸化物を生産することを目指しています。
2026年9月の主要工事完了、12月までの試運転開始を予定しており、2027年には生産拡大に入る計画です。関係企業は、2027年から適用される調達規則を前に、米国の磁石・防衛産業向け供給について優先的な権利が設定されていると説明しています。
これはレアアースの「中流」、つまり採掘した鉱石を分離・精製し、金属へ加工する段階に当たります。レアアースの供給不足が本当の「鉱業ブーム」につながるのであれば、こうした設備が実際にキャッシュフローを生み出すことが重要です。
一方、カナダには処理施設よりはるかに多くのレアアース鉱床があります。ノースウエスト準州のNechalacho/Tardiff、ケベック州とラブラドール州の州境に位置するStrange Lake、ケベック州のAshram、ブリティッシュコロンビア州のWicheeda、ラブラドール州のFoxtrotなどです。
カーボナタイト型鉱床は軽希土類を多く含む傾向があります。一方、一部の鉱脈型や過アルカリ岩型鉱床には、より多くの重希土類が含まれます。現在の輸出許可制度によって価格が大きく上昇したのは、まさにこうした重希土類です。
ただし、軽希土類を採掘できても、中国以外に分離設備がなければ、実質的には中国のサプライチェーンへの依存が続くことになります。
カナダ政府による重要鉱物への資金支援やMajor Projects Officeも、こうしたレアアース案件を支援しています。同時に、2026年にサスカチュワン州で生産を開始した銅・亜鉛プロジェクトなども支援対象となっています。
しかし、これらは異なる鉱種です。金や銀を副産物として生産する銅・亜鉛鉱山を、単に「重要鉱物」という言葉が使われているからといってレアアースの鉱業ブームに含めるべきではありません。
鉱業ブームが起きるためには、新規生産能力への投資を正当化できる価格、予算内で機能する処理技術、そして一定の品質を満たす製品を10年間購入してくれる顧客が必要です。
現在のレアアース市場には、中国国内と国外で大きな価格差があります。しかし、輸出許可が緩和されれば、この価格差は急速に縮小する可能性があります。また、西側企業が進める処理・分離プロジェクトでは、建設費の上方修正も相次いでいます。
一方、防衛、自動車、風力タービンなどのメーカーという明確な買い手も存在します。こうした企業は長期のオフテイク契約を締結する可能性がありますが、中国産レアアースが合法的かつ安価に入手できるようになれば、再び複数の調達先を利用する可能性もあります。
前回のレアアースブームでは、多くの精鉱生産企業が破綻し、建設された処理施設も稼働しないまま残されました。しかし、今回は政府が産業に直接関与しています。価格下限、公的研究施設、防衛産業による認定、オーストラリア政府による融資などがその例です。
政府による需要や支援があれば、通常の市場環境では採算が取れない分離施設にも資金を供給できます。一方で、採算性の低い鉱山を政策的に維持している間に、中国の輸出規制が緩和され、中国国外の価格プレミアムが消滅する可能性もあります。
本当の意味でレアアースの鉱業ブームが起きるとすれば、単に「より多くの鉱床を掘削する」ことではありません。中国の輸出許可に依存しない、鉱山から磁石までの一貫したサプライチェーンを構築することです。精鉱、分離、金属、磁石、そして認定された顧客までをつなげる必要があります。
現時点ではLynasが最もその状態に近く、カナダではSRCがその構築を進めています。それ以外の多くのプロジェクトは、まだ将来の開発スケジュール上にある段階です。そして鉱業では、こうしたスケジュールが遅れることも珍しくありません。
重要な節目となるのが2026年11月10日です。中国が2025年10月に導入した域外適用を含む追加規制が再び発効すれば、中国国外での価格プレミアムが維持され、中流工程へのさらなる投資が進む可能性があります。
一方、規制の停止措置が再び延長されれば、現在の「供給不足」は一時的なものとなり、供給不足による価格プレミアムだけを前提として評価されていた企業は、改めてコストや事業採算性で評価されることになります。
どちらのシナリオも、金鉱株を購入する理由とは直接関係ありません。
では、金は良い投資先なのでしょうか。
金は中央銀行による購入に加え、宝飾品やテクノロジー分野からの需要を持つ金融資産です。8月の米雇用統計で非農業部門雇用者数が16万2,000人増となった後、金価格は1オンスあたり4,365米ドルまで下落しました。金は準備資産であり、金利動向にも左右される資産ですが、ジスプロシウムの代替品ではありません。
では、今は金に投資するのに適した時期なのでしょうか。それは投資目的によって異なります。財政リスクや中央銀行による金購入を重視する投資家にとって、4,400米ドルという価格は、すでに5,594米ドルを記録した長期的な相場サイクルの一局面と捉えることができます。
一方、4,500米ドルを維持することを追加投資の条件としていた投資家にとっては、直近の下落によってその条件が崩れたことになります。次に注目されるのはCPIと9月15~16日のFOMCです。しかし、これらはサスカチュワン州のレアアース分離施設が予定どおり稼働するかどうかとは関係ありません。
金鉱株や銀鉱株は、それぞれの金属価格に加え、生産コスト、ストライキ、鉱石品位などの影響を受けます。中国商務部(MOFCOM)のレアアース輸出規制に直接連動するものではありません。
「重要鉱物」を事業資料に記載している総合鉱山会社であっても、重要鉱物から実際に売上高が発生するまでは、基本的には既存の金や銀などの事業を中心に評価すべきです。同様に、銀を生産しながらレアアース鉱区も保有する企業についても、両事業を分けて評価する必要があります。
本記事では、「推奨金関連株」や「最高評価の金関連株」といった銘柄推奨は行いません。金について考えるのであれば、中央銀行による購入、ETFへの資金流入、実質金利、米ドルなどを見る必要があります。
一方、レアアース磁石について考えるのであれば、輸出許可、重希土類、分離設備、オフテイク契約などを見る必要があります。検索キーワードに両方が含まれているという理由だけで一緒に考えると、2026年の金市場に対する投資判断で、2011年のレアアースブームを追いかけるようなことになりかねません。
現在の供給不足が、中国以外で数年間にわたる鉱業ブームへ発展するためには、いくつもの条件を満たす必要があります。
2026年11月に中国の規制が再び強化される、あるいは現在の規制が維持されること。中国国外におけるジスプロシウムとテルビウムの価格プレミアムが続くこと。Lynasの重希土類生産量が増加し、再び60%規模の設備投資費の上振れが起きないこと。
さらに、SRCが施設を完成させるだけでなく、実際に金属生産を拡大すること。重希土類を比較的多く含むカナダまたはオーストラリアのプロジェクトの少なくとも1件が、分離施設との契約を確保したうえで資金調達に到達すること。そして磁石メーカーがそこで生産された金属を認定し、中国国内価格の低下によって中国産レアアースが輸出市場を一気に取り戻さないことも必要です。
反対に、新たな米中間の合意によって規制が緩和され、許可を得たレアアースが大量に市場へ供給され、中国国内外の価格差が解消されれば、現在の供給不足は後退する可能性があります。
その場合、希少性による価格プレミアムだけで評価されていた企業は、鉱山を保有する化学企業のように、生産コストや収益性を中心に評価されることになるでしょう。
どちらのシナリオが実現するかを確実に予測することはできません。ただし、どちらも現在公表されている情報から想定できるシナリオです。
レアアースは、新たな供給不足に直面しています。その理由は、中国が重希土類や磁石を事実上、許可制の市場へ移行させたためです。
中国以外の供給網を見ると、実際に稼働する分離施設はまだ限られている一方、開発候補となる鉱床は数多く存在します。カナダが短期的に果たす重要な役割は、新たな鉱山ラッシュではなく、サスカチュワン州で建設されている分離・金属製造施設です。
では、投資家は次の鉱業ブームを期待すべきなのでしょうか。注目すべきなのは、今後10年間にわたるレアアースの中流工程です。重要なのはコスト、輸出許可、そして2026年11月10日に何が起こるかであり、「最高の金鉱株」といった銘柄リストではありません。
金が今、良い投資対象なのかについては、金市場そのものの条件から判断すべきです。テルビウムなどのレアアースをその判断材料に含める必要はありません。
レアアースの供給不足はすでに現実のものとなっています。しかし、それが本格的な鉱業ブームにつながるかどうかは、現在計画されている分離・精製施設やサプライチェーンが実際に構築されるかにかかっています。
【重要なお知らせ】
本記事は情報提供および教育目的のみを意図したものであり、レアアース関連証券、金鉱株、銀鉱株、その他の金融商品の購入、売却、保有に関する投資助言や推奨を目的とするものではありません。
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Ben McGregor氏は、Canadian Mining Reportで毎週更新される「Weekly Roundup」を執筆し、金属・鉱業セクターを分析しています。金、銅、ウランなど幅広い鉱種を取り上げ、市場動向やTSXV上場のジュニア鉱山会社について、データに基づいた分析を提供しています。