※本記事は、Canadian Mining Report にて Ben McGregor 氏が執筆した内容を翻訳・再構成したものです。
天然資源投資家として40年以上の経験を持つRick Rule(リック・ルール)氏は、これまで幾度もの好況と不況を乗り越え、事業を立ち上げ、売却し、非常にボラティリティの高い市場で資産を築いてきました。
長年の友人であり投機家でもあるLobo Tiggre(ロボ・ティグレ)氏との対談で、ルール氏が語ったのは具体的な銘柄やマクロ経済予測ではありません。「好きなことをする」「独立して考える」「ボラティリティに耐える」「非対称なリスク・リターンを追求する」といった、長期的な成功を支えてきた考え方でした。
これらは単なる売買ルールではなく、不確実な状況でどのように意思決定するかという哲学です。大手鉱山会社、開発企業、高リスクのジュニア探査会社など、どの資源株へ投資する場合でも、リスクと時間、そして資源ビジネス特有の特性を考えるための有効な枠組みになります。
ルール氏が最初に挙げた教訓は、「お金そのものに執着すると、かえってお金を稼ぐことを妨げる場合がある」というものです。
若い頃のルール氏は、「月末になる前にお金がなくなる」ような家庭で育ったことから、経済的に自立したいという思いが強く、仕事の報酬ばかりを気にしていました。
その姿勢を変えるきっかけとなったのが、妻のBonnie氏からの助言でした。お金ばかり考えるのではなく、自分が好きな仕事に集中し、顧客へより良いサービスを提供することを優先するよう勧められたのです。
そこで証券分析、信用分析、交渉といった自分が得意で好きな分野に集中したところ、わずか1四半期ほどで経済的な成果も大きく改善したといいます。
ルール氏は「お金は、他人に価値を提供することで得られる」と考えています。彼にとって富とは、自分が生み出した価値と、自分が消費した価値との差です。
また、「金持ちになる最も簡単な方法は、すでに金持ちの人をさらに金持ちにすることだ」とも述べています。資産を持つ人はお金の価値を理解しているため、価値あるサービスに対して対価を支払うことを惜しまないからです。
資源投資でも同じことが言えます。地質、鉱業、鉱床発見そのものに興味を持つ投資家は、単に話題の銘柄を追いかける投資家よりも有利です。
鉱業投資では長時間の調査が必要であり、多くのジュニア企業は最終的に失敗します。それでもプロセスそのものを楽しめる投資家であれば、成果が出るまで数年間待つことも比較的容易になります。
資本集約的で景気循環の影響を強く受ける天然資源ビジネスについて、ルール氏は「逆張り投資家になるか、轢かれるかのどちらかだ」と表現しています。
ただし、これは単に市場の反対側へ行けばよいという意味ではありません。重要なのは、周囲の感情や物語ではなく、自分自身で数字と論理を確認することです。
その例として、ルール氏は過去のウラン市場を挙げています。当時、ウラン価格は生産に必要な総コストを下回っており、業界全体が1ポンド生産するたびに損失を出す状態でした。
市場では「ウラン産業は崩壊する」と見る向きもありましたが、ルール氏の考え方は単純でした。ウラン価格が上昇するか、原子力発電所の電気が止まるかのどちらかです。後者の可能性が低いなら、価格が上昇する可能性の方が高いと判断したのです。
つまり、真の逆張りとは「みんなと反対のことをする」ことではなく、市場価格に論理的な矛盾が含まれていないかを考えることです。
ジュニア金鉱株や銀探査会社、銅開発会社を評価する際にも、生産コストを下回る評価になっていないか、鉱床発見の可能性が無視されていないか、解決可能なリスクに対して過度なディスカウントがかかっていないか、といった点を確認することが重要になります。
ルール氏がこれまで経験した「10倍株」を社内で調査したところ、平均的な保有期間は約5年間でした。
さらに、その半数以上は保有期間中に一度は50%程度下落しています。つまり、大きなリターンを得るには単に待つだけでなく、大幅な含み損にも耐える必要がありました。
ルール氏が感情的な判断を避けるために使っている方法はシンプルです。株を買う際、自分宛てに短いメモを書きます。
そのメモには、なぜその株を買ったのか、投資仮説が失敗する可能性が高い3つの要因、そして自分が想定している企業価値を書き残します。
そして3カ月ごと、あるいは株価が大きく動いたときに、そのメモを読み返します。現在の株価や感情ではなく、もともとの投資仮説が変わっているかどうかを確認するためです。
投資仮説が崩れていなければ、株価下落は必ずしも売却理由ではなく、むしろ追加購入のチャンスになる場合があります。
ルール氏によれば、数年間の保有や50%の下落に耐えられないのであれば、資源セクター自体が適していない可能性があります。鉱業では、四半期単位の短期的な成果だけを求めても、大きなリターンを得ることは難しいからです。
ルール氏は、50%を失う可能性があっても、成功した場合に10倍以上になる可能性があるなら投資対象になり得ると考えています。
この「非対称なリスク・リターン」という考え方は、政治リスクにも当てはまります。
ルール氏は過去にベネズエラで4回、資産を国有化された経験があります。それでも、地質的な可能性が非常に大きいのであれば、再び投資する可能性があるといいます。
彼の考え方は「盗まれる価値がないような平凡な鉱床より、盗みたくなるほど価値のある鉱床を持ちたい」というものです。
また、政治リスクは外国にだけ存在するものではないとも指摘しています。カリフォルニアやアルバータ州でも、超過利益税、ロイヤルティ引き上げ、数年間に及ぶ許認可の遅れなどによって、プロジェクトのNPV(正味現在価値)が大きく損なわれることがあります。
重要なのは国名だけで「安全」「危険」と判断することではありません。鉱床の規模、経営陣の能力、税制、許認可制度などを踏まえて、得られる利益とリスクの大きさを比較する必要があります。
ルール氏が重視しているもう一つの考え方が、パレートの80対20の法則です。
どの分野でも、一部の人が成果の大部分を生み出します。鉱業ではその偏りがさらに大きく、ルール氏は「上位1%ほどの人やチームが、実際に生み出される富の大部分を作っている」と考えています。
彼自身、過去を振り返ると、誠実さと資金を増やす能力の両方をすでに証明した少数の人だけと仕事や投資を続けていれば、より少ない労力で資産を増やせた可能性があると話しています。
だからといって、新しい人や企業をすべて拒否するわけではありません。ただ、新しい人間関係や投資を始める際の基準を高くするべきだということです。
何度も成功している地質学者、経営者、金融関係者、アドバイザーを探し、繰り返し失敗している人は避ける。このシンプルな選別が重要になります。
ルール氏にとって最も苦しく、同時に最も価値のある経験は1980年代初頭に起きました。
1970年代の資源強気相場で若くして大きな資産を築いたルール氏は、自分の成功が市場環境ではなく、自分自身の能力によるものだと思い込むようになりました。
しかし、その後サイクルが反転すると、大きな資産を持っていた状態から純資産がマイナスになるまで転落しました。
ルール氏は、失った資産以上に「自分の慢心を失えたこと」の方が価値があったと振り返っています。
この経験から、市場のサイクルは必ず変化すること、高値はいずれ新しい供給や需要減少を招いて高値そのものを修正すること、そして市場で生き残るには自分の能力を過信しないことを学びました。
この経験が、その後の投資哲学すべての基礎になっています。プロセスを重視し、周囲から間違っていると思われても待ち続け、市場の群衆に売買のタイミングを決めさせないという姿勢です。
カナダの鉱業市場は、世界でも有数の規模と透明性を持つ資源株市場です。
その一方で、過度に宣伝された企業、負債の多い企業、最終的に鉱山になることのないプロジェクトも数多く存在します。
ルール氏の考え方は、こうした企業を選別するフィルターとして活用できます。
これらを実践してもリスクそのものがなくなるわけではありません。しかし、資源セクターで時折生まれる非常に大きなリターンを得られるまで、市場から退場せずに生き残れる可能性は高まります。
リック・ルール氏の成功法則は、短期間で金持ちになるための方法ではありません。資本を失いやすい資源ビジネスの中で、合理性を保ち、生き残り続けるためのルールです。
自分が価値を提供できる仕事に集中する。独立して考え、数字で判断する。自分が保有する資産の時間軸に合わせて投資期間を考える。大きな上昇余地を得るための代償としてボラティリティを受け入れる。そして、何度も成功している人と仕事をし、強気相場を自分自身の才能だと勘違いしない。
こうした考え方を身につければ、チャンスとリスクの両方が大きいカナダ鉱業市場でも、より合理的に投資判断を行えるようになります。
調査には時間がかかり、大幅な下落も避けられません。しかしルール氏の経験では、最終的に大きな成果を得るのは、投資結果だけでなく、そのプロセス自体を重視した人たちでした。
【免責事項】
本記事は情報提供および教育のみを目的としており、投資助言、証券の購入・売却・保有の推奨、または特定の人物、企業、投資戦略を推奨するものではありません。
資源関連株、ジュニア鉱山株、商品への投資には、元本を全額失う可能性を含む高いリスクがあります。過去の実績は将来の結果を保証するものではありません。
投資判断を行う前に、ご自身で十分な調査を行い、必要に応じて資格を持つ専門家へ相談してください。著者および発行者は登録投資顧問ではありません。
Ben McGregor氏は、CanadianMiningReport.comで「Weekly Roundup」を執筆し、金属・鉱業セクターに関する分析を行っています。
金、銅、ウランなど幅広い鉱種を扱い、データに基づいた視点と投資機会を見極める分析を組み合わせながら、特にTSXV(トロント・ベンチャー取引所)に上場するジュニア鉱山企業を中心に市場動向を発信しています。