※本記事は、Canadian Mining Report にて Ben McGregor 氏が執筆した内容を翻訳・再構成したものです。
ジュニア資源市場で生き残れるかどうかは、一度の大発見よりも、何十年もの市場サイクルを通じて磨かれた投資原則によって決まることが少なくありません。ベテラン投資家のJeff Phillips(ジェフ・フィリップス)氏は、その考え方を30年以上にわたって実践してきた人物です。
フィリップス氏は1990年代半ばに資源業界へ入り、1990年代後半のブーム、2003~2011年のスーパーサイクル、その後の長期的な弱気相場、そして現在の回復局面を経験してきました。その間、ジュニア企業への資金提供や助言を行い、自らも大株主として投資を続けてきました。
TokStocks Small Caps PodcastでKia Reynolds(キア・レイノルズ)氏と対談したフィリップス氏は、30年間の経験から得た教訓を、ジュニア資源株へ投資するうえでの実践的な枠組みとして語っています。
フィリップス氏が企業を選別する際の基準は非常にシンプルです。「一緒に休暇を過ごしたくないような人とは仕事をしたくない」と考えています。
重要なのは、プレゼン資料よりも過去の実績です。経営陣は過去に鉱床を発見したことがあるのか。株主に利益をもたらしたことがあるのか。そして市場環境が悪化したときにも、正しい判断をしてきたのかを確認します。
フィリップス氏の経験では、経営陣の80~90%はこうした基準を満たしていません。そのため、経営陣による十分な株式保有と、その情報が完全に開示されていることを重視しています。
経営陣自身が多額の資金を投じていれば、短期的な資金調達よりも、長期的な企業価値の向上を目指す可能性が高まります。同氏は、経営陣と利害を共有する株主が合計で会社の25~70%を保有している例を挙げています。
こうした株主構成が成功を保証するわけではありません。しかし、経営陣が単なるプロモーターではなく、オーナーとして行動する可能性は高くなります。
多くの投資家は発行済株式数を確認しますが、フィリップス氏はさらに踏み込んで、「誰が株式とワラントを保有しているのか」を確認します。
短期的な個人投資家や証券会社の顧客が多い資金調達では、株価が少し上昇しただけで売りが出て、継続的な上値圧力となる可能性があります。
一方、25セントで買った株を40セントで売ることではなく、10億ドル規模の資産を作ることを目指す長期投資家が株主の中心であれば、企業はより長い時間軸で事業を進められます。
ワラントそのものが良い、悪いというわけではありません。重要なのは誰が保有しているかです。フィリップス氏自身も長期株主としてワラントを受け取ることには前向きですが、短期資金が大量のワラントを保有する状況には慎重です。
実際、同氏はフルワラント付きの資金調達に参加した際、自ら保有株を1年間ロックアップしたこともあります。企業がその後、より高い株価で資金調達できるようにするためです。
また、ほとんど自社株を持っていない経営陣へ大量のストックオプションを与えることは警戒すべきサインです。一方、CEO自身が会社の50%を保有しているような場合には、それほど大きな問題ではないと考えています。
フィリップス氏は、Rick Rule(リック・ルール)氏がよく使う「マグロ」の例えを紹介しています。
マグロが好きな人がスーパーへ行き、半額セールになっていたら、値下がりしたから買うのをやめるのではなく、むしろ多く買うはずです。株式についても、投資対象の価値を理解しているのであれば同じ考え方ができます。
ジュニア資源市場は「上りはエスカレーター、下りはエレベーター」のような市場です。金属価格の調整やリスク回避局面では、本当に価値のある資産を持つ企業でも40%程度下落することがあります。
そこでパニックになってしまう投資家は、そもそも投資先の地質や事業地域について十分に理解していなかった可能性があります。
フィリップス氏自身も、保有する資産や経営陣に変化がないにもかかわらず株価が大幅に下落した企業については、現在も買い増しています。こうした判断ができるのは、最初から値動きではなくファンダメンタルズを基準に投資しているからです。
フィリップス氏は、自身の30年間のキャリアをいくつかの異なる市場サイクルに分けて考えています。
現在のサイクルについては、まだ初期段階にあるとみています。最初の上昇局面を終え、現在は通常の「スピードバンプ」、つまり一時的な調整・持ち合い局面に入っているという見方です。
銅、ウラン、金、一部の重要鉱物など、世界が実際に必要としている金属については、過去10年間の探査不足に加え、供給安全保障を巡る新たな地政学的プレミアムもあり、より大きな強気相場が数年間続く可能性があると考えています。
ただし、フィリップス氏は一つの警告もしています。彼が経験してきた大きな強気相場は、最終的にはすべて景気後退や金融危機で終わりました。
また、同氏は熱狂的な強気相場よりも、静かで投資家が選別的になっている市場を好みます。強気相場では資金投入のスピードが急激に上がり、資金調達額も膨らみ、投資家や企業の規律が失われやすいからです。
市場が落ち着いていれば、投資家は企業を慎重に選び、より良い条件を求め、継続的な増資による株式の希薄化も避けやすくなります。
フィリップス氏は通常、6~12社程度の中核銘柄に集中投資し、それぞれの企業で4~9%程度の株式を保有することがあります。
ただし、これは彼の総資産の一部にすぎません。フィリップス氏は「資産のすべてをジュニア資源市場へ投入してはいけない」と警告しています。
同氏が投資を始める際に好むのは、時価総額500万~4,000万ドル程度の企業です。一定規模があるため本格的な資金を呼び込める一方、成功した場合には数倍のリターンを狙える余地が残っているからです。
目標は、初期段階の資産を時価総額2億~5億ドル程度まで成長させることです。その規模になれば、それまでとは異なる機関投資家の資金が入り、さらにプロジェクトを成長させられる可能性があります。
フィリップス氏は、まったく未開拓の地域でゼロから探査する「グリーンフィールド」のプロジェクトには、ほとんど資金を提供しません。
同氏が好むのは、過去に生産していた鉱山の周辺などを探査する「ブラウンフィールド」のプロジェクトです。新しい地質学的知見や技術を使うことで、過去には発見できなかった、より大きな鉱床が見つかる可能性があるからです。
また、鉱床の規模も重要です。中堅・大手鉱山会社が買収したいと思えるほどの規模が必要であり、たとえ高品位でも、大手企業にとってほとんど影響を与えない小規模な鉱床にはあまり関心を持ちません。
フィリップス氏は、プロジェクト・ジェネレーター型の企業にも投資しています。これは、自社の鉱区を資金力のある企業とジョイントベンチャーにし、パートナー側の資金で探査を進めるモデルです。
この方法なら株式の希薄化を抑えながら上昇余地を残せます。ただし重要なのは「プロジェクト・ジェネレーター」という肩書きではなく、実際にどのような企業と提携し、いくつのプロジェクトが動いているかです。
過去の商品サイクルは、主に金属価格そのものによって動いていました。しかし現在のサイクルには、新たな要素があります。
欧米の政府や企業が、重要鉱物のサプライチェーンを戦略的な問題として認識するようになったことです。
この変化によって価格変動がなくなるわけではありません。しかし、適切な国・地域と金属については、強気相場が過去より長く続く可能性があります。
フィリップス氏の考え方から、ジュニア資源株を評価する際には次のポイントを確認できます。
ジュニア資源市場では、成功すれば人生を変えるほどの利益を得られる可能性がある一方、失敗すれば投資資金を永久に失うこともあります。
フィリップス氏の30年間の経験が示しているのは、この市場を宝くじのように捉えるのではなく、長期的なビジネスとして向き合うことの重要性です。
現代社会が必要とする金属は、10年以上にわたって十分な探査が行われてきませんでした。さらに、重要鉱物の供給確保を巡る地政学的な動きも始まったばかりです。
こうした環境では、優れた人を見極め、株式構成を慎重に確認し、市場で人気がないときにも質の高い資産を買える投資家ほど、次の大きな鉱床が発見されたときまで生き残れる可能性が高くなります。
フィリップス氏が繰り返し語るように、市場は時として「マグロを半額で買える」チャンスを与えてくれます。重要なのは、値下がりしたときに、それが本当に価値のある「マグロ」だと見抜けるかどうかです。
【免責事項】
本記事は情報提供および教育のみを目的としており、投資助言、証券の購入・売却の推奨、またはインタビューで言及された企業を推奨するものではありません。
ジュニア資源株は非常に投機性が高く、投資元本を全額失う可能性があります。投資判断を行う前に、ご自身で十分な調査を行い、必要に応じて資格を持つ専門家へ相談してください。過去の実績は将来の結果を保証するものではありません。
Ben McGregor氏は、CanadianMiningReport.comで「Weekly Roundup」を執筆し、金属・鉱業セクターに関する分析を行っています。
金、銅、ウランなど幅広い鉱種を扱い、データに基づいた視点と投資機会を見極める分析を組み合わせながら、特にTSXV(トロント・ベンチャー取引所)に上場するジュニア鉱山企業を中心に市場動向を発信しています。