※本記事は、Canadian Mining Report にて Ben McGregor 氏が執筆した内容を翻訳・再構成したものです。
ニューモントはバリックに19億5,000万米ドルを支払い、FiberlineとMikeの両プロジェクトを拠出します。一方、バリックは高品位のFourmile鉱床を拡張されたネバダ・ゴールド・マインズ(NGM)の合弁事業に組み入れます。今回の合意により、両社間の未解決の紛争が解消され、ガバナンスが強化されるほか、約1億オンスの金を有する巨大な鉱山群が形成され、バリックによる北米事業のIPOへの道も開かれます。
2026年8月10日、Barrick Mining Corporation(バリック・マイニング)とNewmont Corporation(ニューモント)は、長年にわたるネバダ・ゴールド・マインズ(NGM)の合弁事業を再編する包括的な合意を発表しました。
今回の取引では、これまで合弁事業の対象外だった資産をNGMに組み入れるほか、両社間の未解決の紛争を解消し、ガバナンス体制を刷新します。また、バリックが計画している北米の金資産の新規株式公開(IPO)について、ニューモントの同意も得ることになります。
取引の中心となるのは、ニューモントからバリックへの19億5,000万米ドルの現金支払いです。これは両社がそれぞれ拠出する資産の相対的な価値を反映したものです。ニューモント株やネバダ州の金鉱業に注目する投資家にとって重要なのは、ニューモントがその対価として具体的に何を得るのかという点です。
ネバダ・ゴールド・マインズは2019年、バリックがニューモントに対する180億米ドル規模の敵対的買収提案を撤回した後、両社がネバダ州の資産を統合して設立されました。現在では米国最大の金生産拠点であり、世界でも有数の規模を誇る金鉱山群となっています。
権益比率はバリックが61.5%、ニューモントが38.5%で、バリックが操業を担当しています。当初のポートフォリオにはCarlin、Cortez、Turquoise Ridge、Phoenixなどの主要鉱山に加え、焙焼設備、オートクレーブ、製錬設備、ヒープリーチ施設などの関連インフラが含まれていました。
一方、設立当初から一部の資産は合弁事業の対象外とされていました。バリックはCortezのGoldrush鉱山に隣接する高品位のFourmile鉱床を保有し、ニューモントはFiberlineとMikeの開発プロジェクトを保有していました。
こうした資産の除外は、次第に両社間の対立の原因となりました。ニューモントは、NGMの資源管理や、バリックが100%保有するFourmileプロジェクトへの経営資源の配分などについて問題を指摘していました。2026年8月の今回の合意では、これらの資産を一定の条件のもとでNGMに組み入れることで、こうした問題の解決を図ります。
改定された合弁事業契約では、以下の内容が盛り込まれています。
両社によると、拡張後のNGMは約1億オンスの金を有する鉱山群となる見込みです。また、安全性、操業効率、長期的な価値創出について、今後も協力を続ける方針を示しています。
1.高品位のFourmile鉱床に対する38.5%の権益
Fourmileは、地質学的にも戦略的にも今回の取引の中心となる資産です。バリックはFourmileを「今世紀で最も重要な金鉱床の一つ」と位置付けています。
2025年末時点で、Fourmileには約260万オンスの概測資源量(品位17.59グラム/トン)と、1,300万オンスの予測資源量(品位16.9グラム/トン)が確認されています。これらの品位は、金鉱山の業界平均を大きく上回る水準です。
2025年の予備的経済性評価(PEA)では、比較的低い採掘量でも数十年にわたって年間平均60万~75万オンスを生産できる可能性が示されています。また、調査の前提条件に基づくと、鉱山寿命全体のAISC(全維持費)は1オンスあたり650~750米ドルと推定されています。
FourmileをNGMに組み入れることで、ニューモントはこれまで合弁事業の対象外だったこの資産に38.5%の権益を持つことになります。高品位の鉱石は、処理施設へ供給される鉱石全体の品質向上や混合コストの削減、ネバダ州にある鉱山群全体の寿命延長につながる可能性があります。
ニューモントが将来のFourmileから得られる生産量とキャッシュフローの38.5%を確保することは、同社のネバダ州における長期的な事業基盤の強化につながります。
2.FiberlineとMikeをNGMの共通プラットフォームに統合
ニューモントが保有するFiberlineとMikeの開発プロジェクトは、独立したプロジェクトから、米国最大の統合型金鉱山群の一部となります。
これにより、NGMがすでに保有する処理インフラや操業ノウハウ、規模の経済を活用できるようになります。両プロジェクトの開発・操業リスクも共有され、これらの資産から得られる金は、約1億オンスに拡大するNGMの資源基盤に加わります。
3.未解決の紛争をすべて解消
今回の合意により、合弁事業をめぐって続いていた法的・運営上の摩擦が解消されます。資源の利用や経営上の問題をめぐる過去の対立も決着することになります。
ニューモントにとっては、これまでパートナーシップの重荷となっていた不確実性や経営上の懸念が軽減されます。
4.ガバナンス権の強化
改定された合弁事業契約により、NGMの経営に対するニューモントの発言力も強化されます。
報道によると、NGMのゼネラルマネージャーの任命にはニューモントの承認が必要となり、ニューモントの代表者も経営陣に加わる見込みです。これらの条項は、これまで指摘されていた操業会社による支配への懸念に対応し、61.5%を保有するバリックと38.5%を保有するニューモントの利害関係をより一致させることを目的としています。
5.ネバダ州の金鉱業における、より強固な長期的地位
ネバダ州は、政治的に安定し、インフラが整備され、地質学的にも恵まれた世界有数の金鉱山地域です。
ニューモントは、これまでNGMから除外されていた有望な資産を、改善されたガバナンス体制のもとで一つの事業体に統合することで、同社最大の非操業権益の戦略的一体性と規模を高めることになります。拡張されたNGMは、より持続可能で、複数世代にわたって操業できる事業基盤となる可能性があります。
6.バリックによる北米事業のIPOを後押し
ニューモントが同意したことで、バリックが計画する北米の金資産を保有する新会社のIPOに向けた潜在的な障害が取り除かれました。バリックは、この新会社の少数株(10~15%を目標)を上場する計画です。
新会社には、NGMの権益、Pueblo Viejo、Fourmile、関連する探査資産などが含まれる予定です。IPOは主にバリックの資本構成や投資家基盤にメリットをもたらしますが、両社間の紛争が解決され、拡張後の合弁事業の価値が明確になることで、両社にとっての不確実性も軽減される可能性があります。
ニューモントにとって、19億5,000万米ドルは巨額の資金です。ただし、一部のアナリストはFourmileを合弁事業に組み入れるためには、ニューモントがさらに多額の資金を支払う必要があると予想しており、40億米ドル規模との見方も出ていました。そのため、今回合意された19億5,000万米ドルという金額は、それまでの市場予想と比べればニューモントに有利な水準となりました。
この支払額は、ニューモントがFiberlineとMikeを拠出することを考慮したうえでの、両社が提供する資産の純価値の差額を反映しています。その対価として、ニューモントはより高品位で長寿命の鉱山群に対する恒久的な権益と、改善されたガバナンス権を獲得します。
最終的に今回の取引がニューモントの株主価値を高めるかどうかは、Fourmileの実際の操業実績、新たな資産統合の成否、将来の金価格、そして拡張後のNGMの操業コストによって左右されます。
ニューモント株を保有する投資家にとって、今回の取引は同社にとって最も重要な米国資産の将来を明確にするものです。ネバダ・ゴールド・マインズは長年、ニューモントの帰属生産量に大きく貢献しており、最近の四半期では約24万オンスとなっています。
Fourmileの高品位鉱床が加わり、ガバナンスをめぐる摩擦も解消されたことで、長期的には合弁事業から得られる収益とキャッシュフローの質が向上する可能性があります。
一方、短期的には19億5,000万米ドルの現金流出がニューモントのバランスシートや資本配分の柔軟性に影響します。投資家は、同社がどのように支払いを賄うのか、また他の支出や株主還元計画を調整するのかを注視することになるでしょう。
長期的には、資源基盤の拡大とパートナーシップ条件の明確化によって、ネバダ州での事業をめぐる長年の不透明感が軽減されます。ネバダ州の金鉱業全体も、同地域を代表する2社の金生産企業間の不確実性が低下することで恩恵を受ける可能性があります。
今回の合意にもリスクはあります。Fourmileはまだ開発段階にあり、最終的な生産量、コスト、開発スケジュールは、今後の掘削や調査、許認可、建設によって左右されます。予備調査は2028年を目標としています。
高品位鉱床であっても、冶金学的・地質工学的に複雑な問題を抱える可能性があります。また、すでに巨大な鉱山群へ新たなプロジェクトを統合するには、慎重な開発計画が必要です。金価格の変動、操業コストの上昇、ネバダ州の規制・財政環境の変化も、今後の収益に影響を与える可能性があります。
さらに、19億5,000万米ドルの支払いについては、ニューモントが将来得る追加キャッシュフローの38.5%分の現在価値と比較して評価する必要があります。ガバナンスは強化されるものの、バリックが引き続き過半数の権益を持つ操業会社であることにも変わりはありません。両社の利害を一致させ続けることが重要になります。
ニューモントは19億5,000万米ドルを支払い、自社の2つの開発プロジェクトを拠出することで、バリックのFourmile鉱床に対する恒久的な権益を獲得します。同時に、FiberlineとMikeを世界最大級の金鉱山群に統合し、長年にわたる紛争を終結させ、大幅に強化されたガバナンス権を得ることになります。
その結果、拡張後のネバダ・ゴールド・マインズは、より大規模で高品位かつ構造的にも強固な合弁事業となります。
ニューモントの投資家にとって、今回の取引は明確な選択を意味します。世界有数の金鉱山地域における、より強固で長期的な地位を確保するために、現在多額の資本を投入するという選択です。このトレードオフが魅力的なものになるかどうかは、今後数年間の拡張されたNGMの操業実績によって決まるでしょう。
ニューモントとバリックの今回の合意によって不確実性は解消されました。今後は、計画を実行に移す段階となります。
ニューモントとバリックの今回の取引は、投資家にとってどのような意味がありますか?
今回の取引により、ネバダ・ゴールド・マインズにはFourmile、Fiberline、Mikeが組み入れられ、金の資源基盤は約1億オンスに拡大します。また、両社間の紛争解決、ガバナンスの強化、ニューモントからバリックへの19億5,000万米ドルの支払いも含まれています。
ニューモントは、より高品位で長寿命となる鉱山群の38.5%の権益を確保する一方、バリックによる北米事業のIPOにも同意します。両社の投資家は、拡大した資産基盤がもたらす長期的な価値と、短期的な資金負担や開発リスクを比較する必要があります。
【免責事項】
本記事は、情報提供および教育のみを目的としており、投資助言、証券の購入・売却・保有の推奨、または将来のパフォーマンスの予測を行うものではありません。鉱業への投資には、元本を失う可能性を含む重大なリスクがあります。ニューモント株、バリックの証券、ネバダ・ゴールド・マインズの権益価値は、金価格、操業実績、開発結果、その他の要因によって大きく変動する可能性があります。
投資判断を行う前に、読者自身で十分なデューデリジェンスを実施し、企業の公式提出書類や技術報告書を確認するとともに、資格を有する財務・法律の専門家に相談してください。過去の実績および現在の資源量推定値は、将来の結果を示すものではありません。本分析に基づいて行われた行動について、著者および発行者は一切の責任を負いません。
Ben McGregor氏は、Canadian Mining Reportで毎週の「Weekly Roundup」を執筆し、金属・鉱業セクターに関する分析を提供しています。市場のトレンドを捉え、複雑な市場変動をTSXV上場のジュニア鉱山会社に関する分かりやすい洞察へとまとめています。
毎週の記事では、金、銅、ウランなど幅広い鉱種を取り上げ、データに基づく視点と投資機会を見極める分析を提供しています。変化の激しいジュニア鉱山業界を理解するうえで、投資家に役立つ情報を発信しています。