金の価格が市場最高値を更新!金価格が上昇している6つの要因と投資家が取るべき行動とは?

August 4, 2025

金価格が過去最高値を更新し続けています。2025年5月には1トロイオンス当たり3500ドルを超える高値をつけたため、このニュースを目にして、「今こそ金投資を始めるべきか?」と考えている方も少なくないのではないでしょうか。

金相場の値動きは、株式や債券といった他の金融商品とは異なる独自の特性を持っています。金は、インフレヘッジや地政学リスクが高まった際の「有事の安全資産」として機能するため、経済の不確実性が増大すると需要が高まり、価格が上昇する傾向があります。一方で、経済が安定し、株式市場が好調な時期には、相対的に金の魅力が薄れ、価格が下落することもあります。

本記事では、金価格高騰の背景にある5つの主な要因を解説し、今後の金相場の見通しや金投資に対する向き合い方について紹介します。さらに、今後の金相場の見通しと、変動する市場で日本人投資家が賢く金投資と向き合うための具体的な行動指針について詳しくご紹介します。

金価格が上昇している5つの主な要因

金価格の上昇には、以下の5つの要因が複雑に絡み合っています。

  1. 供給量に対して需要が高まっている
  2. 世界的な地政学リスクの上昇
  3. 新興国を中心とした中央銀行による金購入の加速
  4. 実質金利の低下と利下げ期待
  5. 世界的なインフレの進行と通貨価値の希薄化

それぞれの要因について、詳しく見ていきましょう。

供給量に対して需要が高まっている

金は、地球上に存在する量が物理的に限られている希少な資源です。人類が金を利用し始めてからの約6000年の間に採掘された金の総量は約21万トンと推定されており、これはオリンピック公式競技用プール約3杯分に相当する量に過ぎません。世界金協会(WGC)の調査によれば、地球上に残る未採掘の金の埋蔵量は推定約5万トン前後とされていますが、現在の技術では採掘が困難な鉱脈や、採算が合わない埋蔵地が多く存在するため、容易に供給を増やすことはできません。

現在、金は全世界で年間約3000トンのペースで産出されています。しかし、鉱山会社による新規の金鉱山開発案件はほとんど出ておらず、世界の年間金生産量は頭打ち状態にあるのです。一方で、金需要の大部分を占める宝飾品と金融投資に加え、近年は半導体など電子機器関連での工業用途も拡大しています。このように、需要の増加と供給の制約という基本的な経済原則が、金の希少性を高め、価格上昇の大きな一因となっています。

世界的な地政学リスクの高まり

現在、ウクライナとロシアの紛争、イスラエルとハマスの衝突、中国と台湾の対立など、世界各地で地政学的な緊張が高まっています。さらに、2024年11月の米国大統領選挙に向けて、トランプ前大統領の再選の可能性が取り沙汰されるなど、国際情勢はますます複雑化する可能性を秘めています。

このような地政学リスクが高まると、**金は「無国籍の安全資産」**として需要が強まる傾向があります。国家や通貨の信頼性が揺らぐ中で、有形資産である金への資金逃避が加速し、価格を押し上げる要因となります。世界の不確実性が増せば増すほど、金は投資家の避難先として買われるのです。

新興国を中心とした中央銀行による金購入の加速

世界の中央銀行は、通貨の信頼性向上や経済的安全保障などの理由から、金準備を保有しています。WGCのデータによると、最も多く金を保有しているのはアメリカは8133トンですが、近年では、新興国が積極的に金を買い集める傾向が顕著になっています。特に中国、ロシア、BRICs諸国の動きが注目されています。

例えば、ロシアはウクライナ侵攻に対する制裁によって海外資産が凍結され、国際決済システムから排除されました。このことを受け、中国はドルに依存しない経済システムの必要性を強く認識するようになり、人民元を使用する決済システムの推進と並行して、その信頼性向上のために積極的に金を買い集めています。

中国以外にも、トルコやロシアなどの新興国を中心に、中央銀行の金保有量は増加傾向にあります。この背景には、「世界の分断」という構造があります。アメリカや欧州などの民主主義陣営と、中国やロシアなどの専制主義陣営との対立が続く限り、新興国中銀の金購入も続く可能性が高いと考えられます。

実質金利の低下と利下げ期待

金は、保有していても金利がつきません。そのため金利が高い局面では、債券などを保有すれば得られたはずの利益を逃してしまいます。コロナショックから立ち直るため、最近まで各国は低金利政策をとっていました。低金利のために金保有によって逃す利益をさほど意識しなくて良かったことが、金への需要を押し上げてきたと言えるでしょう。

金利が上昇すればインカムゲインのない金の価格は下落し、金利が低下すればモノとしての価値がある金の価格は上昇する傾向があります。このような関係があるため、金へ投資する際は、金利動向を最も重視すべき要素の一つと考えられます。金価格は米ドル建ての動きが重視されるため、米金利や米ドルの動きが特に重要です。

金利が変動すれば、為替も変動します。変動した為替もまた金市場に影響を与えるのです。金利が上がっていると、預金したがる人が増えるため、金の価格は下落傾向になります。

アメリカはこれまで利上げを続けてきましたが、そろそろ利下げする期待感もあるため、金が買われている要因となっているのです。

世界的なインフレの進行と通貨価値の希薄化

世界的なインフレ傾向の継続も、金を買う大きな動機となっています。特に、新型コロナウイルス感染拡大以降、世界各国は経済を支えるために大規模な財政出動と金融緩和策を実施し、市場に大量の資金が供給されました。これにより、通貨供給量が増加し、通貨の価値が相対的に希薄化する懸念が高まっています。

金は、歴史的に「究極のインフレヘッジ資産」として認識されており、通貨の価値が下がる局面でその購買力を維持する役割を果たしてきました。

例えば中国では、最近の不動産市場や株式市場の低迷を背景に、資金の逃避先として金を買おうとする動きが顕著です。中国政府による民間企業への統制強化(「共同富裕」政策など)によって中国の株価や不動産価格が下落すると、失望した中国人投資家の「脱中国」の動きが強まり、資金が金などの安全資産に流入していることが、金価格上昇に影響を与えています。

今後の金価格はどうなる? 金の価格が下がるのはどんなとき?

長期的な視点から見ると、金価格は上昇トレンドを維持する可能性が高いと言えるでしょう。この見方の背景には、世界的な金融緩和政策の継続や、通貨価値の相対的な低下などの要因があります。特に、主要国の中央銀行による量的緩和策の長期化は、金の相対的価値を高める方向に作用すると考えられています。

しかしながら、金価格の動向は複雑な要因に影響されるため、短期的には下落リスクも存在します。具体的には、以下の要因が発生すれば金の価格が下落する可能性があります。

  • 金の供給量が増える
  • 金の需要が減少する
  • 政策金利が上昇する
  • インフレ状態を脱却する
  • 世界経済が安定し、金以外の投資対象の魅力度が上がる
  • テロや戦争など、地政学的リスクが極めて低くなる

金の需要が増加するのは、国や企業への信頼が揺らぎ、通貨や株式の信用度が下がる場合です。一方、経済が安定している時期は、金以外の投資対象が注目されます。例えば現在問題となっているウクライナ危機や、イスラエルとハマスの衝突などが落ち着いた場合、金価格は下落する可能性があります。

また世界的な金融不安が解消された場合も株式の信用が回復し、金価格が下落する可能性があります。将来的に、世界のどこかで巨大な金脈が見つかったり、採掘技術の発達によって金の採掘量が格段に増えれば、金の価値は薄れていく可能性もあります。

さらにインフレ状態から抜け出した場合、金よりもほかの投資資産の需要が増え、金相場が下落する可能性があります。インフレが起こって金に投資した場合は、経済が正常化するタイミングを正確に見極めることが重要です。

政策金利が上昇した場合、金利が付く預貯金の魅力が増すため、金から通貨へと資産を移動させる投資家が増えます。反対に、政策金利が引き下げられると通貨の価値が下がり、リスクヘッジの効果がある金の需要が増します。政策金利と金価格は逆相関の関係といわれており、政策金利が大幅に上昇すれば金価格は下落する可能性が高いでしょう。

とはいえ、今後も投資対象としての金の評価は揺らぐことはないでしょう。最近では半導体などの部品素材として工業利用するケースも目立ってきていることから、金の需要は増していくはずです。短期的に見れば、金価格の相場が下がることもあり得ますが、長期的に見れば、金価格は引き続き上昇していく可能性が高いと言えるでしょう。

金価格が上昇している状況で投資家がするべきこととは?

投資家にとって、金投資は長期的な資産保全戦略の一環として検討に値します。金は株式と比較してボラティリティが低く、様々な経済リスクに対する備えとしての役割を果たします。しかし、金投資では次の点に注意しましょう。

  • 投資アプローチ
  • 適切な資金配分
  • 流動性とリスク
  • 投資手段の選択
  • ポートフォリオ全体のバランス

投資アプローチ

金への投資は、短期間での急激な利益を期待するよりも、長期保有を前提とした段階的な購入戦略が望ましいです。特に、毎月一定額ずつ購入していく**「ドルコスト平均法」**は、価格が高い時には購入量を抑え、価格が低い時には購入量を増やすことで、結果的に購入単価を平準化し、価格変動リスクを軽減する効果が期待できます。

適切な資金配分

「将来のために」と過度に熱心になり、金に偏重した投資をすることは避けるべきです。金は収益を生まない資産であるため、生活に必要な資金や他の有望な投資機会を損なわないよう、必ず余剰資金の範囲内で、無理のない投資額を心がけましょう。ポートフォリオ全体のバランスを考慮することが重要です。

流動性とリスク

金は、比較的容易に現金化できる流動性の高い資産ですが、相場状況によっては売却時に損失を被る可能性も当然あります。短期的な値動きに一喜一憂せず、「長期的な資産保全」という本来の目的を常に念頭に置き、冷静な視点を持つことが重要です。

投資手段の選択

金への投資方法には、「金地金」「ETF」「金鉱山株」などがあります。各手段にはそれぞれ特徴があるため、自身の投資目的やリスク許容度に合わせて選択することが大切です。

  • 金地金:直接保有できるが、保管や売買に手間がかかる
  • ETF:取引が容易で少額から投資可能、ただし運用手数料がかかる
  • 金鉱山株:金価格の上昇以上の利益を得られる可能性があるが、個別企業リスクもある

ポートフォリオ全体のバランス

金投資は、全体的な投資ポートフォリオの一部として位置付けるべきです。株式、債券、不動産、その他のオルタナティブ資産など、異なる値動きをする資産クラスとのバランスを考慮し、適切な資産配分を行うことが、リスク分散と安定的なリターン確保の鍵となります。

まとめ

金価格の高騰には、供給量の制限、地政学リスクの上昇、新興国の需要増加、低金利環境、通貨増刷、世界的なインフレなど、複数の要因が絡み合っています。短期的には価格変動のリスクがありますが、長期的には上昇トレンドが続く可能性が高いと考えられます。

日本の投資家は、自身の投資目的やリスク許容度に応じて、金をポートフォリオに組み込むことを検討してもよいでしょう。ただし、金は収益を生まない資産であることを念頭に置き、長期的な資産保全の観点から慎重に判断することが重要です。これから金の投資を始める場合は、世界経済の動向や各国の金融政策にも注目しながら、適切な投資戦略を立てていくことをおすすめします。

【出典】

田中貴金属工業 過去5年間 月次金価格推移
https://gold.tanaka.co.jp/commodity/souba/m-gold.php

WORLD GOLD COUNCIL Gold reserves (Tonnes):Q2 2024 Snapshot
https://www.gold.org/goldhub/data/gold-reserves-by-country#registration-type=linkedin&just-verified=1

OANDA証券 貴金属の基礎 
https://www.oanda.jp/lab-education/metals_basic/gold15/gold_cost_us_interest_rate/

マネックス証券 【第2回】金投資を知る!金に注目する理由
https://info.monex.co.jp/gold/guide/attention.html

ソニーフィナンシャルグループ Special Report 金高騰の背景と株式市場への警鐘
https://www.sonyfg.co.jp/ja/market_report/pdf/sp_240424_01.pdf

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